手術
人工関節センター
股関節は、骨盤側にある受け皿の役目を果たすお椀状の寛骨臼と大腿骨の先端にあるボール状の大腿骨頭から成り立っている球関節です。歩くだけで体重の数倍もの力が加わるため、股関節全体が関節包、靭帯、筋肉で覆われ、安定性をもっ た構造になっています。
●歩いているとき→体重の3~4.5倍程度
●走っているとき→体重の4~5倍程度
●階段・椅子からの立ち上がるとき→体重の6.2~8.7倍程度
●床からの立ち上がるとき→体重の10倍程度
また球関節であるために大きな可動域を持つことができ、スクワットやあぐらなど大きな可動域が必要な動作も行えます。
股関節が病気やケガで機能に障害がでると、この安定性と可動性が制限され歩行はもちろん、更衣・靴下着脱・足の爪きり・車の運転・・階段昇降といった幅広い日常生活動作が制限されてしまいます。
股関節が痛くなる主な病気
●変形性股関節症
●大腿骨頭壊死症
●リウマチ性股関節症
●大腿骨頚部骨折
など
変形性股関節症とは
股関節の軟骨に変性、摩耗が発生して痛み、変形、可動域制限などの症状を起こす疾患です。
原因が明らかでない一次性股関節症と、何らかの原因により続発する二次性股関節症に分類できます。
先天性股関節脱臼の既往やもともと臼蓋の構造がやや未熟である(臼蓋形成不全)ような何 らかの原因や、股関節に障害を起こすような原因により続発する二次性股関節症の割合が日本では多いと言われています。
変形性股関症の病期分類
変形性股関節症の治療法
●保存療法
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日常生活指導(杖の使用、ダイエットなど)
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投薬治療(内服や湿布)
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リハビリ療法(筋トレ、ストレッチなど)
●手術療法
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大腿骨側の骨切り術、骨盤側の骨切り術など
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全人工股関節置換術
手術には種類があります。若い方の場合、骨切り術といって関節の向きを変え、体重を支える面を変えてしまう方法もあります。
痛みがひどく、手術のリスクなども理解いただいたうえで患者様のご希望があれば、股関節を人工股関節に置き換える全人工股関節置換術を行っておりますが、医師から積極的に勧めることは決してありません。患者様がやりたいと思える時期に受けられることが一番と考えています。お子さんがまだ小さい、仕事が忙 しいといった理由でリハビリしながら先延ばしにされる方もいらっしゃいます。まずは外来で相談しながら保存療法を開始するのが最初のスタートです。
股関節への負担を減らすために日常生活で気を付けること ~股関節症の進行を予防するために~
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長時間歩行や立ったままの労働はできるだけ避け、椅子をうまく使った生活を心がける。
- 杖を使用することで股関節への負担をかなり軽減できる。(体重の3倍→1倍程度に軽減できる)
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ダイエットが有効。
体重を5㎏減らすとすると股関節には約15㎏負担が軽減する。 -
痛みの出ない範囲でなるべく動くこと。関節に負担のかからない水中歩行、水泳、水中体操はとくにお勧め。
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お子さんやお孫さんの抱っこも、座りながら行えば負担が減ります。
主に変形性股関節症、大腿骨頭壊死症、リウマチ性股関節症、大腿骨頸部骨折に対して全人工股関節置換術、人工骨頭挿入術を行っています。
左右両側に病気をお持ちの患者様も、一回の手術で同時に行うことも可能です。
当院での股関節手術の特徴は、患者様の股関節の状態にもよりますが、従来の臀部から筋肉を切離してアプローチする方法ではなく、大腿前側方の筋肉を切らない方法を採用することが多いです。そのため、従来の股関節手術に比べ早期離床、早期退院が可能になり術後は禁止の姿勢は基本的にはありません。また出血も少ない傾向にあるので輸血を回避できる可能性が従来法より高いと考えられます。入院期間も2週間から4週間程度であり、ベッドに余裕があり患者様の希望があれば、さらにリハビリをしっかり行ってから退院することも可能です。術後は運動も可能です。
全人工股関節置換術って実際は…
筋肉・腱を切らない。そのため、従来の股関節手術に比べ早期離床、早期退院が可能。術後は禁止の姿勢は基本的にはありません。入院期間も2週間から4週間程度。退院後の運動も可能。
当院では全人工股関節置換術を施行する際、術前に3次元術前計画ソフトウェアを用いて患者様のCT画像を解析しております。
全人工股関節置換術で最も重要なことは患者様にあった正確なインプラントを設置することですが、このソフトを用いることで患者様一人一人の骨の形状にあったインプラントの種類やサイズ、角度などを手術前に正確に把握することが可能であり、従来よりもさらに正確な手術を行えるようになりました。
手術の合併症は何がありますか?
人工股関節の合併症は種々の報告がありますが、主なものは脱臼と感染、エコノミークラス症候群です。
●脱臼
筋肉を切らない手術法は、従来より脱臼率が低いと言われております。また当院では前途の術前計画ソフトで、より正確な手術が可能になったために脱臼率をさらに下げることができていると考えております。
●感染
手術前後の抗生剤の投与や手術中の十分な洗浄、清潔操作などで予防しています。
●エコノミークラス症候群(下肢静脈血栓症)
手術後早期離床をする、血栓のできやすいふくらはぎ周りを間欠的に圧迫するフットポンプを使用する、血栓を出来にくくする内服薬を使用するなどして予防しています。