ドクターズインタビュー
加藤 敦史(かとう あつし)
整形外科・人工関節センター長
H21 新潟大学医学部 卒
―― 先生が診療を行う上で大切にしているモットーを教えてください。
病気だけを診て治療するのではなく、患者さんの今の生活や将来やりたいことなどを知った上で診療することを心がけています。そのために意識しているのは、患者さんが話しやすい雰囲気をつくることです。そして、治療方法は投薬やリハビリ、生活習慣の改善、手術など様々ありますから、複数の選択肢を提示し、患者さんが納得した上で治療を進めることを重視 しています。緊急性の低い手術は、積極的に勧めることはありません。患者さんご自身が手術を希望する時に受けるべきものだと考えています。
―― 先生が特に得意とする領域について教えてください。
「人工股関節置換術」を得意としています。人工股関節置換術は、病気や骨折などで壊れてしまった股関節を金属やセラミック、ポリエチレンなどからできた人工関節に置き換える手術です。この手術によって痛みを取り除き、歩行が可能になります。主に、大腿骨頸部骨折、大腿骨壊死、変形性股関節症、リウマチ性股関節症の方など、関節の痛みで本当にやりたいことに制限が出ていたり、日常生活に支障をきたしている方が検討される手術です。歩行ができるようになることは、患者さんの豊かな人生につながります。
長年、人工関節は長期耐久性が課題でしたが、手術手技と人工関節の進歩によって、近年では20~30年の耐久性があると言われています。人工関節のデザインも増え、骨や軟部組織をできるだけ温存できるようになってきました。また、最小侵襲手術という皮膚切開を最小限にして手術を行う方法が全国的にも普及しつつあります。従来の手術方法に比べ、筋肉や腱の温存が可能となり、術後の脱臼のリスク減少、痛みの軽減にもつながります。全ての患者さんに最小侵襲手術が適応されるわけではありませんが、様々な手術方法の中から最適な方法をご提案いたします。
―― 人工股関節置換術の術後ついて教えてください。
術後の回復度合は患者さんの術前の歩行能力や手術方法によって異なりますが、最小侵襲手術を行った患者さんは手術翌日から歩行のリハビリを開始し、多くの方が2週間程で退院していきます。
術後に特に注意いただきたいのは、感染症と脱臼です。人工股関節置換術に限らず、ほとんどの手術で感染症のリスクがあります。予防のため抗生剤の投与を行いますが、発熱や関節の腫れ、痛みなど感染症の兆候が見られたら、すぐに担当医に相談しましょう。脱臼については、退院前に脱臼しやすい角度や動きについて医師や理学療法士から指導がありますので、それを守っていただくこと。そして、特に異常はなくても定期的な診察をお勧めしています。人工関節の調子が良いほど何年も放置してしまいがちですが、定期的にレントゲンを撮り、早い段階で人工関節の異変に気づけば、再置換術(人工関節の入れ直し)も小さな手術ですみます。少しでも違和感を覚えた時にすぐに担当医に相談できるよう、ご自宅の近くで病院を選ばれることも長く安心して人工関節とお付き合いいただくためのポイントの1つかと思います。